PEOPLE WITH ESSENCE OF ELEGANCE

柚希礼音さんに見る
「品格あるスタイル」

“ソファに腰掛けて撮影を”
というこちらのリクエストに、
一度で決める完璧なポージング。腕の角度や服のあしらい、ブーツのつま先まで。
“見せる、映える”を極めた柚希礼音さんの美しい所作と
その佇まいに窺えるのは、
元宝塚トップスターの品格。

「パンツルックなので、男役っぽく(笑)。立ち居振る舞いや細かな所作は、宝塚時代の賜物。
宝塚音楽学校に入学した瞬間から、細かい言葉遣いや目上の方に対する礼儀作法、
美しい身のこなしまで徹底的な教育を受けます。
最初は怒られないために必死で覚えるのですが、
それが段々当たり前として身につき、
後に自分のエレガンスに繋がるありがたみ。
宝塚の舞台は空間全体に物凄いパワーがあって、
役を演じる際は360度以上の意識が必要でした。
厳しい教えは、役作りだけでは追いつけない、
補うことのできない内面のエレガンスを
養ってくれるもの。
上下関係の美しいピラミッドがあるからこそ、
宝塚歌劇団には唯一無二の品格を
感じるのだと思います」。

その厳しく美しき世界でトップスターに。
“宝塚歌劇団は人生で最高の出会い”
と語る柚希さん。

「高校まではバレエに夢中。
両親にバレエ留学を反対され、父親の助言がきっかけで、宝塚音楽学校を受験することに。
宝塚を愛する人たちばかりが集い、競い合う厳しい世界。
当初は私も母も不安しかなかったです。
でも、いざその世界に飛び込んでみると、バレエをしているときには頑張っても何ひとつ思い通りにいかなかったことが、
宝塚では手足を大きく広げ、深く息を吸い、伸び伸びと演技をすることができるようになった。
お団子ヘアにするために伸ばしていた髪をバッサリ切ってショートにしたときも
“一番似合っているかも”と素直に思うことができたんです。
バレエが大好きで懸命に頑張ってきたけれど、好きなことと向いていることは違うと痛感。
これ以上はない、私にとって最高の出会いでした」。

その語り口調にも、人柄は表れるもの。
ひとつひとつの言葉を丁寧に穏やかに紡ぎ、
耳心地よく響く、柚希さんの語り口。

「声も顔つきも、自分なりの男役を研究して育んでいきました。
男役にしては女性っぽい顔立ちを、どうやったらかっこよく見せることができるか。
私の顔は卵形で頬骨が少し高く、それが女性っぽく映ってしまうんです。
特に左顔がポチャっとしていて優しく見えると先輩に教えていただき、
男役の写真撮影ではフェイスラインがシュッとしている右顔から撮ってもらうことが多かったですね。
指摘されて改めて自分の顔をじっくり見ると眉毛や目にも左右差があって、
それを理解したうえでメークをするようになると見栄えが全然変わる。
宝塚に入らなければ、自分のことをここまで知ることも、向き合うこともなかったと思います」。

伝統を重んじながらも、なぞるだけではない
“自分なりの姿”を追求し続けた柚希さん。
宝塚入りのきっかけが
“ファンではなかった”からこそ悩んだこと、
良かったことがあったと当時を振り返ります。

「ファンの視点を持たずに宝塚入り。
どうしたらファンの方たちに“キャー!”と喜んでもらえるのか、
最初の数年はわからないまま過ごしていました。
それが自分の中でダメなことだと落ち込むこともあったのですが “あなたならファンの人には見えない、
宝塚にハードルの高さを感じている人の視点がわかるはず”と、それを長所として捉えてくれる先生や先輩方がいてくれたんです。
そのことをきっかけに、伝統を大切にしながらも
“自分が演じるなら?”という視点で役作りをするように。
代々リーゼントで演じられてきた役を、
ちょっと前髪を垂らしてアレンジをしてみたり。
韓国ドラマやその時代のトレンドを取り入れ、
エレガントな世界の中にギャップを感じるような
要素を差し込む挑戦をしたんです。
男性も非の打ち所のないかっこよさより、ちょっと欠点があるくらいが魅力的だったりしますよね。
その役柄の欠点をも考えながら役作りをするようになると、
自分の中で目指すところが明確になってきて、
演じることがどんどん楽しくなっていきました」。

自分なりの男役を追求、
だからこそ極めることのできた頂点。
宝塚歌劇団を退団して7年、
柚希さんの目に映る“外から見る宝塚歌劇団”。

「それはもう、最高です。在籍中も感じていましたが、
客席から見るとエレガントな世界が守られている、継承されている理由がすごく良くわかる。
宝塚歌劇団は劇場と稽古場を持っているだけでなく、セットも衣装も写真撮影も、すべてが敷地内で賄え、整う仕組みになっている。
同じ空間のなかに同じ志を持った人たちが集い、
ひとつの世界を作り上げていく……。
無駄がないだけでなく、憧れや目標を共有しているからこその豪華さや精度の高い舞台だと、
その世界を外から見ると改めて実感します。
照明も本当にプロフェッショナルで、あんなに眩いピンスポットは他にない。
初めて新人公演でピンスポットを浴びたときは、あまりの眩しさにびっくりしてひっくり返りそうになりました(笑)。
スポットライトが気持ちいいと思えるようになったのは、
トップを務めさせていただくようになり、しばらく経った頃。
今でもライトを見つけると、その光を浴びようとついつい顔を向けてしまうんです」。

ミュージカルにドラマ出演。新しい分野に積極的に挑戦し、活躍の場を広げている柚希さんが
“これから挑戦したいこと”。

「あー、気持ちいい! と、
心と体が歓喜するように歌いたい。
宝塚の舞台はいつも真剣勝負で達成感も物凄くあるのですが、それ以上の“特別な境地”に行ける瞬間があるんです。
あれは生涯忘れることができないほどの快感。
もちろん、常にそこを目指して舞台に立ちますが、同じルーティーンをこなしてもなかなか辿り着けない。
大勢の人から成り立つ舞台なので、自分のコンディションだけでなく、いろんな条件がきれいにシンクロしたときに味わえるものなのかもしれません。
ナポレオンを演じた際にその境地に達したのですが、そのときは演じているのではなく、舞台の上でナポレオンの人生を生きているような感覚。
転ばないように気をつけようとか、セリフを噛まないようにしようという心配が頭から一切消え去り、
私のなかで観客の皆さんはフランスの民衆になっている。
その瞬間は一緒に演じている仲間も、観ているお客さんもいつもと違う特別な何かを感じてくれている気がします。
あの気持ち良さを歌で、違うステージでもう一度味わってみたい。
新しい世界での、新しい境地。宝塚に入ったばかりの頃はあんなに歌うことが苦手だったのに、人生って面白いですよね」。

新しい挑戦といえば、
ANAYIのニューコレクションに触れていただき
“いつもの自分と違う着こなし”に
挑戦してくれた柚希さん。
新しい自分を発見!と嬉しそうに、
チャーミングに微笑む姿も印象的でした。

「ご提案していただいた服を拝見したときに“これは似合わないかも”と、不安に感じていたスタイリングもあったんです。
プライベートはどちらかというとカジュアルで、フェミニンなワンピースとかは私とは縁遠い存在と、今まであまり着る機会がなくて。
一番難易度が高そうに感じたのがブルーのワンピースのように見えるセットアップでしたが、着てみたら一番好き!
皆さんにも褒めていただき、私のお気に入りの1着になりそうな予感です。
ロングブーツを合わせたシンプルで大人なスタイリングも素敵でした。
いつもの私だったら革ジャンやキャップ、スニーカーを合わせて、辛口な要素をミックスすることで甘さを抑えようとしていたはず。
ANAYIのデザインは大人に相応しい甘さを心得ているというか、余計なアレンジや計算なしに大人のフェミニンが成立する。
私が大好きなピンクの発色も絶妙で、甘い人が着たらちゃんと甘く、クールな人が着たらかっこよくも映る色合い。
すごく楽しく発見のある1日でした。あのブルーのセットアップを着て、早くお出かけしたい!」。

その着こなしに香る、
意思とエレガンス。
柚希さんが想う“エレガンス”とは?



「エレガンスはその人の生き方や思考から
育まれるものだと想うのですが、私は自分自身を楽しませて、
喜ばせて、自分のために時間を作って生きている人に魅力や品格を感じます。
時間は作るもの。自分のために時間を使うことができている人は、清潔感があって、
品があって、走っている姿すら素敵に見えたりする。
最近はヨガにはまっていて、今日も朝一番で行ってきたんです。
体に左右差があるか、背骨が硬いか柔らかいか、奥歯を噛み締めていないか……。
今日の自分のコンディションを理解して目を向けることで、体が喜んでいる気がします。
仕事においても、周囲に気を遣うより自分のことをきちんとやることが最優先。
これは母からの教えも影響していて、休みの日に“元気、ご飯行く?”と気遣うと、
いつも“まずは自分のことをしっかりやりなさい”と言われてきました。
この言葉は、今でも常に胸に留めていること。
新しい現場で新しい人たちと関わることになっても、好かれるとか仲良くなるために頑張るのは違うと感じています。
いい作品を作りたいという共通の思いがあって集っているのだから、それを成し遂げることが一番大事。
そのために自分のやるべきことに集中し努力をしていると、自然と仲は深まっていくもの。
宝塚時代もトップとして若い子を引き上げなくてはと頑張っているときより、
私の自分自身を磨き続ける姿を見てくれることでみんなが慕ってくれるようになり、組の団結意識が深まったような気がするんです」。

最後に。自分を楽しませ、喜ばせるために、
柚希さんが“していること、したいこと”。

「宝塚時代から、大きな作品を終えた後や忙しい時期を抜けたときに“自分にご褒美”をあげるようにしています。
公演も残り3、4日になると肉体も精神的にもしんどくなってくるのですが、
千秋楽の日に飛行機を予約して“これが終わったらハワイに行ける!”となると、俄然モチベーションがアップ。
今でも仕事の合間をぬって、日帰りで温泉に行ったり、パッと思い立って七里ガ浜にドライブに行ったり。
“人生は遊園地”と表現されている方がいて、人生を彩るアトラクションは実は身近にいっぱい揃っていて、
それを楽しむかは自分の選択次第だと。
本当にその通りだと思います。
つまらないよねと言ったら景色はくすむし、楽しもうって言えば目の前がパッと明るくなる。
毎日を楽しくすることに積極的な生き方をしたいなって思います。
今日は皆さんのおかげで、楽しく素敵な撮影をすることができました。
ありがとうの気持ちも込めて、今日のご褒美は冷えたシャンパンにしようかな」。


Profile & Information

柚希礼音
1999年初舞台。
2009年宝塚歌劇団星組トップスターに就任。
主な主演舞台に『ロミオとジュリエット』
『オーシャンズ11』
『眠らない男・ナポレオン- 愛と栄光の涯(はて)に-』などがある。
第30回松尾芸能新人賞、
第65回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、
第37回菊田一夫演劇賞を受賞。
2014年に日本武道館でのコンサートも実現するなど、
宝塚歌劇100周年を支えた。
退団後の主な作品に、ミュージカル
『プリンス・オブ・ブロードウェイ』
『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』
『マタ・ハリ』、
第27 回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した『FACTORY GIRLS 〜私が描く物語〜』、『ボディガード』など。
また、2022年4月期TBS火曜ドラマ
「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」にも出演し、活躍の場を広げている。
次回作は、2022年9月〜上演予定のミュージカル『COLOR』。


新作ミュージカル『COLOR』
〈東京公演〉
期間:2022年9月5日(月)〜9月25日(日)
会場:新国立劇場 小劇場 

〈大阪公演〉
期間:2022年9月28日(水)〜10月2日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ

〈愛知公演〉
期間:2022年10月9日(日)〜10月10日(月祝)
会場:ウィンクあいち

出演(五十音順・ダブルキャスト):
浦井健治・成河(ぼく/大切な人たち) 
濱田めぐみ・柚希礼音(母)
原作:坪倉優介『記憶喪失になったぼくが見た世界』
音楽・歌詞:植村花菜 脚本・歌詞:高橋知伽江 演出:小山ゆうな

■公式ホームページ
https://horipro-stage.jp/stage/color2022/



Photo / Jundai Watanabe
Hair Make / CHIHARU
Interview & Text / Hiromi Sakurai
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