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香りと豊かなくらしのプロフェッショナル 川野 菜穂さんの想うエレガントな人、エレガントな香り
2022.10.07


PEOPLE WITH ESSENCE OF ELEGANCE

川野菜穂さんに教わる
「エレガントな香り」

アロマブランド「À TERRE(ア・テール)」を
主宰する、
調香家・川野菜穂さんとともに
ANAYIのオフィスに訪れたのは、
思わず深呼吸したくなるような心地よい香り。

「扉を開ける前に、シュシュっとアロマミストの
シャワーを浴びたんです。
どこでも手軽に香りを
広げる、纏うことのできるアロマミストは
常に携帯。
“いい香り”と、皆さんが一瞬
目を閉じるような仕草をしているのを見ると
すごく幸せな気持ちになります。
忙しない日常の中でも一瞬で癒しを感じられて、
香りに包まれつつ植物の生命力を
自らの力に変えて暮らす
ことが
できるのが、アロマテラピーの魅力。
美しく逞しい植物の力をもっと身近に、味方に。
ア・テールは、そんな想いを込めて
立ち上げたブランドです」

オリジナルブランドだけでなく、OEM開発や
パーソナルブレンディング、
空間プロデュース
など、多方面から香りの魅力を届ける川野さん。
アロマテラピーの世界で活躍するきっかけと
なったのは、
パリ・サントノーレでの
“香りの誘い”。

「アロマテラピーの仕事を始める以前は、
アパレルメーカーでPRをしていました。
パリにも出張で訪れたのですが、毎日あちこちと
巡り歩き、
ホテルでも書類作成と大忙し。
疲れてフラフラとサントノーレを歩いていると、
どこからかものすごくいい香りが
漂ってきたんです。
花に吸い寄せられる蝶のように香りに導かれて
入ったのは、とあるブティック。

自分の好みとかに関係なく、ただその香りに
癒されたくて、
気がつけばラックの端から
端まで服を眺めていました。
香りの正体は、ブティックの2階にディスプレイ
されていたアロマキャンドル。
時間の許す限り香りを堪能しようと、
ブティックに随分と長居。
あまりの心地よさになかなか
その場を離れられず、
結局はアロマキャンドルを
購入してホテルに戻りました。
日本に帰り、自宅でアロマキャンドルを
焚くたびに心身がほぐれ、
ふと蘇るパリの記憶や情景……。
香りの持つ秘めた力への探究心が芽生えました」

香 り と 繋 が る 記 憶

香りから、記憶がふと蘇る。
これはプルースト効果といい、五感のうち唯一
ダイレクトに本能的な脳へと情報が伝わる嗅覚は、
記憶や感情などに
働きかける力が大きいと
言われています。

「だからこそ、香りは感覚を大切に選んで
欲しい。
嗅覚は“生死を分ける感覚”とも
言われているんです。

日光東照宮の眠り猫の話を
よくさせていただくのですが、
門番の役割を担う猫がどうして眠っているのか。
あれは視覚的な情報に騙されないよう、
目を閉じて嗅覚で敵か味方かを嗅ぎ分けようと
している、という説があるんです。
昔は情報や知識が少なかった分、
感覚に頼るところが大きく、
だからこそ研ぎ澄まされていた。
香りは好き、嫌いと好みがはっきりと
分かれますが、それも本能のアピール。

自分に合うもの、必要としている香りを無意識に
ジャッジしているんです。
私がパリでブティックの
香りに吸い寄せられたのも、
疲れを癒したい
という体が欲した素直なサイン。

精油を選ぶうえで
機能面を気にされる方も多くいますが、
大事なのは自分がどう感じるか。
私がパーソナルブレンドをする際は
“最終的には
自分が素直に心地いいと思うものを選んで
ください”と、
必ずお伝えするようにしています」

大地の恵みから、
体と心を整えて暮らしてきた
人類の歩み

都会の多忙な日常の中でも、植物の恩恵を身近に、
手軽に取り入れることができる……。
“現代的な植物との暮らしが、アロマテラピー”
と語る川野さん。

「薬のない時代は、人々は植物の力で心身を整えてきました。
暖をとるために木を燃やしたら、
その煙を浴びることで
咳や鼻水が止まった……。
自然と共生するなかで、治癒のための術を
見出してきたんです。
薬という化学の時代が始まり200年、
植物の力に
助けてもらった歴史の方が遥かに長い。
“それを思い出しましょう”という
メッセージを込めて、
ア・テールは香りの提案をしています。」

「空間に香りがあることで、
仕事をしながら癒された、
呼吸が深まりよく眠れるようになった、
朝スッキリと目覚めるようになったなど。
植物に触れることが少なくなった現代。
庭に大きな木を植えることはむずかしくても、
一滴精油を空間に垂らすだけで心や体が整う。
面倒くさがりの私でも持続可能な、
快適なライフスタイルの秘訣です」

自然界の恵みとエネルギーを
インスピレーションに、
五感に優しく働きかけるア・テール
オリジナルライン“ART organic”。
心地よい目覚めやリフレッシュに“SPLASH”、
もう一息頑張ろうというときの
エネルギーチャージに“SUNNING”、
入眠効果を高める“MOONLIT”。
この“MOONLIT”は、川野さんが手がけた
ファーストブレンド。


女性の味方にもなるという、
その香りの力

「前職のとき、出張などで自分の中の時間軸が
乱れ、
眠れなくなったことがあったんです。
スマートフォンと一緒で、
人も充電しないと機能しない。
当時は薬局で導眠剤の取り扱いはなく、
睡眠剤を使うことには抵抗があって。
そのときにパリで香りに癒された経験を
思い出し、
精油の効果を学びながら作ったのがMOONLITのブレンド。
月のエネルギーを香りにした、
入眠効果を高めてくれるもの。
ベルガモット、ラベンダー、ゼラニウム、
クラリセージなどを調合。

日中アクセル全開で頑張り、
交感神経・活動神経が
オンの状態になったままで
眠れないという人に、
ブレーキを踏ませてあげる効果が期待できる。

女性の味方にもなる香りで、“更年期の不調を薬で
解決する前に
MOONLITを!”と
おすすめしています。
更年期の不調は、卵巣からエストロゲンの分泌が
急激に減り、
体の中のホルモンバランスが
乱れることで起こるもの。
クラリセージはエストロゲンに近い分子記号を
持ち、
その香りを嗅ぐことでエストロゲンが
分泌されたと脳が認識。
ホルモンバランスを
整えてくれるんです」

誰もが人知れず、悩みや不調を抱えているもの。
それを手助けできる、
寄り添うことができる……。
アロマテラピーによって心地よさを
取り戻した人たちの笑顔が、川野さんの
商品開発の原動力。

「世間にはキラキラと輝いて映っている
大活躍の方が
“不眠で困っている”と聞き、
MOONLITをお渡ししました。
後日、“眠れるようになった!”と
笑顔で報告を受けたときは、
私も不眠の辛さを経験しているので、
自分ごとのように嬉しかったです。

結婚式で香りの演出をした際は、
パーティの終了後に新郎さんから
“香りのおかげで緊張が和らいで、
リラックスしてスピーチができた”と
お礼の言葉をいただいたことも。
香りの演出の依頼は新婦さんからでしたが、
緊張でストレスを感じていた新郎さんに
アロマの力が作用。

私は、男性にもアロマテラピーを
ぜひ取り入れて欲しいと思っているんです。
女性はホルモンのアップダウンが
あるので不安定とも言えますが、
逆に気分や体調が落ち込んでしまっても
上がるきっかけがある。
男性は、ホルモンバランスがずっと一定。
落ちてしまうと上がるきっかけがなく、
故に鬱が深刻になりやすいとも言われています。

ジュニパーやローズマリー、レモン、ライム
など、
すっきりしたものをブレンドしていくと
男性にも受け入れやすい香りに仕上がる。
不穏な時代で心疲れている人が多い今、
癒される
きっかけを探せずにいる人も多い気がします。
わざわざではなく、偶然訪れた場所で
癒しを知る……。

ア・テールの香りの空間演出で
誰かが心地よさを
見出すことができたなら、
それはこの仕事をするうえで
一番の幸せだなと思います」


訪れた人たちが“いい香り”と
思わず微笑む、居心地のいい
香りの作り方

ANAYIのアトリエやショップに漂う香りも、
川野さんのプロデュース。

「ANAYIのコレクションからイメージするのは、
優しく穏やかな一面がありながら、
それだけではない凛とした軸のある女性像。
今日着せていただいたニットのワンピースも、
まさにそう。
上質なニットとニュアンスカラーは
柔らかな印象を与え、
美しく気の利いた
デザイン&シルエットにはブレない個性や
こだわりが伺えます。

ANAYIの服を纏う人はこんなメークで、
あんなヘアスタイルをしていてと、
コレクション
テーマなどを参考にしながら時間をかけて
頭の中に女性像を描き出し、そのイメージが
固まってからブレンドを始めます。
作るときは、直感で短時間。

考えだすと最初に湧いたインスピレーションが
曖昧になっていく気がするんです。
使う精油はだいたい6~7種類ぐらいで、
ルールはありません。
感覚的に必要なものを足していく、
カレー作りとちょっと似ているかも知れませんね(笑)」


素敵な人と、素敵な香り

魅力的な人は、纏う香りも魅力的。
大人になるほどに
強い関係性を見出す、方程式。
川野さんが想うエレガントな人、
エレガントな香りとは?

「ANAYIの香りを初めて作ったのは、10年ほど前。
ブランドの信条は変わらなくとも10年という
歳月のなかで、
私がイメージする香りも
奥行きや厚みを感じるものへと
少しずつ変化していったように感じます。
若い頃はもぎたての桃のように、フレッシュさも
あるけど固さもあって。
それが時間とともに、
優しいピンク色になり柔らかくなっていく……。
人もブランドも、時間の経過によって穏やかさや
柔軟さ、
余裕が育まれていくと思うんです。
いろんな経験を踏んで、自分の心地よさを大切に
何かを選択できるようになったとき。
内から溢れるような、エレガンスを感じる人に
なれるような気がします。

香りも同じ。自然由来のアロマテラピーは、
自分にとって心地よいものを選ぶことで
清らかな内面を整えてくれるもの。
自分自身を整えつつ、ケミカルなものに
負担を覚えはじめた人にも
心地よさを感じてもらえるという、ハッピーな
二次作用が期待できるのもいいところ。

自己愛と他者への思いやりの
バランスがちょうどいいんです。
香水のように香りが長く持続せず、
5、10分で揮発してしまうので
物足りなさを
感じる方もいるかも知れません。
でも、“残らない、残さない香り”というのも
エレガントだと思いませんか?」

Profile

川野 菜穂

エッセンシャルオイルフォーミュレーション、
アロマ空間デザイン、メンタルアロマなどの
アロマテラピーの学びから、解剖学・
化学・心理・環境・
カウンセリングやコーチングなどの学びを重ね、
現在はこころと身体に働きかける調香をしながら「かおりのあるくらし」の啓蒙に努める。
2009年より活動を開始し、オリジナルプロダクトを展開しながら、嗅覚特性を生かした
プロモーション提案・アロマ空間デザイン・アロマプロダクトの
企画開発・パーソナルセッションなどを行う。

À TERRE〈アテール〉
Botanical Blending
オフィシャルサイト
https://a-terre.jp/

À TERRE BOTANICAL BLENDING

自然に学び、自然に生きる
― 空気 ―を変える
アロマのちから

À TERRE(ア・テール)は、大地に根を張る
植物たちの生きるちからを取り入れながら、
こころとからだを穏やかに整える
かおりのあるライフスタイルをご提案しています。
アロマセラピー(芳香療法)は、かつての日本でも人が自然と共存する暮らしの中で培われてきた
天然資源を生かした
自然療法のひとつと言われています。
そのかねてからの生活の知恵を現代のくらしに
- かおり - として取り入れること
それは必要とする「 空気 」を選び
「 空気感 」を生み出すことだと
考えています。
かおりによって空間の印象を変えたり、
気分をリフレッシュしたり。
日々のくらしを生命力に満ちた天然香料のちからで
穏やかに、そして力強く包み込みたい。

ア・テールはかおりの持つちからを信じています。

À TERRE〈アテール〉
Botanical Blending
https://a-terre.shop/



掲載商品は「À TERRE BOTANICAL BLENDING」にてご購入いただけます。
ANAYI OFFICIAL ONLINE STOREでは
ご購入いただけません。
予めご了承ください。






Photo / Jundai Watanabe
Hair Make / Mayu Osada
Interview & Text / Hiromi Sakurai
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